消滅時効の援用で信用情報機関にデタラメ情報が登録される理由
2016/11/26
信用情報機関に登録されている情報には保有期限があることは以前の記事(「信用情報機関の情報保有期限」)でまとめました。
しかし、消滅時効の援用で債権が消滅した場合の扱いについては、業者によっていまだに登録の仕方に違いがあり、扱い方次第でその後の信用回復に向けた道のりにも大きな差が出てきます。
消滅時効を援用された方はぜひ一度自分の信用情報を取り寄せてみてどのようになっているのかを確認することをおすすめします。ここでは消滅時効を援用した後信用情報がどのように登録されているかについてまとめてみたいと思います。
時効の援用はどのように登録されるか
破産や個人再生は、CIC、JICC、KSC各機関とも契約の終了原因を「法定免責」として登録することが可能ですが、消滅時効の援用の場合、時効消滅の事実そのものを登録することが
現時点ではできません。
消滅時効の援用を登録出来ないということは言い換えれば業者によって信用情報機関の情報に対する対応が異なるということでもあります。消滅時効を援用した場合以下の5ついずれかの登録もしくは情報更新がなされます。
- 完了登録
- 貸倒登録
- 契約情報そのものが削除される
- 時効を認めても信用情報機関には延滞を記録し続ける
- 時効の援用をしても放置される
それぞれの項目についてさっとみていきましょう。
まず、完了登録の場合、消滅時効の援用通知を業者側が受領した日付で残高ゼロとなり、終了区分が完了(JICCの場合完済)となります。次に、貸倒登録の場合、残高の記載が残ったまま終了区分が貸倒となります。完了でも貸倒でも、情報保有期限は登録後最長で5年間です。
契約情報そのものが削除される場合、消滅時効を援用した業者と契約があった事実そのものが信用情報機関から削除されます。契約情報が削除されるということは、異動登録も未入金延滞の記録も全て削除されます。俗に言う「漂白」といわれる状態です。これが最も信用回復がしやすいケースとなります。
最後の延滞を記録し続けるというのは上3つの立場とは少々事情が異なりますので、改めて後で触れたいと思います。
消滅時効を援用したことを登録情報から知ることは出来るか
契約情報が削除された場合、契約情報自体がなくなるため、契約をしていた業者やその保証会社など当事者以外は消滅時効を援用したことを知ることが出来ません。
しかし、完了登録の場合、消滅時効を援用したことは信用情報を見れば判別がつきます。
時効援用で完済扱いで契約終了となっている場合
各機関いずれの登録情報にも「入金日」「入金額」に関する項目がありますが、入金の上完済となった場合は入金日・入金額も記載されますが、時効援用で完済登録がされた場合は入金額が空欄のままなので、信用情報を照会した際には消滅時効の援用がなされた可能性が高いと推測できます。
また、CICの場合支払状況が延滞を表す記号であるAが24ヶ月全てに入っていることでも消滅時効の援用をしたことを推測できます。
なぜ信用情報機関の登録情報が業者によって違うのか
「消滅時効の援用による貸金債権の消滅」という同一の事実であっても登録される情報が違う理由は、業者によって時効の解釈が異なるからです。
信用情報機関は業者側から送られてきた情報を登録するだけで、どのように情報を登録するかに関してはほぼ業者側の裁量に任されています。
貸倒は文字通り貸して返ってこなかったから消滅時効の援用であっても貸倒として登録するというもっともらしい理由があるのですが(消滅時効の援用を貸倒として登録することにも問題がないわけではありません。理由は後述します)、いまいち分かりにくいのは完了として登録するケースです。
支払っていないのにどうして完了なんだという疑問がわいてくる方もいらっしゃるかもしれません。
「完了」は強制解約という意味で登録される
完了として登録する理由は単に信用情報機関の運用制度上のによるものです。
業者の保有する債権(貸出し残高)が消滅時効の援用を受けて請求出来なくなくなったため、残高をゼロにして契約終了を登録をする必要があります。その際契約終了を登録するためには終了原因も登録する必要があり、便宜上「完了」としているにすぎません。
終了原因が「完了」となるケースには、正常に支払いを済ませて契約者からの申し出で解約をした場合のほか、業者側が契約を解消した場合、言い換えれば強制解約の時にも完了が終了原因となります。
ここでいう完了は、強制解約による完了を表しています。
「完了」や「貸倒」で登録すると問題があるのか
時効には「遡及効」という効果があります。遡及効とは「効果がさかのぼって生じること」です。これを規定しているのが民法144条です。
消滅時効を援用した場合、時効の起算日から債権がなかったことになります。これが消滅時効を理解する上でとても大事なポイントとなります。時効の完成した日から後に債権がなくなるわけではないのです。
債権の内容をもっと深く探ってみる
単に債権と書きましたが、債権の中身は一体何でしょうか。
債権の発生原因となる契約内容が貸金債権だけの場合
法律論上、債権が発生する原因はいくつかありますが、その一つが契約です。
契約の内容が単に「x月○日にいくら貸したから、期日に元本と利息を請求できる」というものであれば、元本と利息の請求権が債権となります。
では、契約内容が「期限x月○日までの間はいくらまで借入をすることが出来る。返済は別途指定した方法とする。」というものであった時は2つの契約(権利関係)が存在します。
- 指定した方法で借り入れた額と利息を返済する契約
- 有効期限内にいくらまでの範囲内で貸借する契約
カードローンやキャッシングの契約がまさにこのタイプの契約です。
元本利息を請求する債権が消滅したとしても、カードローンやキャッシングのような極度額(利用限度額)を設定する契約自体は別に存在しており、それは時効によって消滅するものではないとも解釈できます。これは完了や貸倒で登録する業者の解釈のひとつです。
カードローンやキャッシングのような「極度方式基本契約」と呼ばれる契約の場合、契約を解除しない限り極度額の設定をする契約は残ったままです。カードローンの借入を全て返済しても有効期限内であればまたカードローンで借入することが出来るのはそのためです。
完了や貸倒で登録する業者は、「残高がゼロになったのは時効の起算日だが、カードローンやキャッシングの契約は時効の援用を受けた日に強制解約、あるいは、貸倒処理した。だから完了や貸倒で登録した」といっているわけです。
貸倒登録の問題点
さきほど「貸倒登録に問題がないわけではない」と書きましたがそれについて簡単に触れたいと思います。
貸倒は回収の見込みのない債権を損失として処理した時に登録されるものです。
消滅時効の援用を受け時効が成立するとこの債権は時効の起算日にさかのぼって消滅します。この「さかのぼって消滅すること」が貸倒として登録することに矛盾点を生じさせる原因となります。
業者側が時効の援用通知を受け取り時効の成立を認める時は、当然のことながら時効の成立日よりも後のことです。ということは、その時には信用情報機関に登録している債権そのものが存在していません。もう存在しない債権を貸倒とすること自体が不可解な話です。
仮に貸倒として終了登録をするのであれば、時効の起算日に貸倒れと登録するのが道理です。もしさかのぼってその日付で登録できたとしても終了した契約の情報保有期限は最長5年で、商事債権の消滅時効期間も5年ですから、貸倒の登録をしたとしても保有期限切れで情報は削除されます。
これに対し、貸倒とする業者は「極度額を設定する契約が貸倒で終わったから貸倒で登録する」「自然債務(後述します)を貸倒処理した」という主張を展開しています。
個別の貸金債権と極度方式基本契約を分ける業者の解釈の問題点
個別の貸金債権、先ほどの例でいう「指定した方法で借り入れた額と利息を返済する契約」だけが時効で消滅したという主張がそもそも通るものなのかという問題点もあります。
カードローンやキャッシングの契約書を見ると「期限の利益の喪失」という条項があります。期限の利益とは、「返済期日までは返済を求められても断ることが出来る権利」のことです。
99.9%の業者は支払いが滞ったりすると残金一括の返済を求めてきます。これが「期限の利益の喪失」です。カードローンの契約書や商品概要説明書には期限の利益の喪失という条文がおかれています。
もし滞納中にお金を借りようとカードをATMに入れると、そのままカードが回収されるか利用停止中で突き返されてしまいます。新たな借入が出来ません。滞納しているわけですから当たり前ですね。
つまり、期限の利益を喪失した時点で契約内容が「極度額の範囲内で金銭を借りられそれを契約通りに返済する」というものから、「残金全額を返済する」というものに変化します。
カードローンやキャッシング契約の消滅時効の起算点は原則期限の利益を喪失した翌日となります。
その残金返済の債権が時効により消滅したということは、残金返済の債権を発生させていた契約そのものも消滅することになります。「契約があるから残金を返済する債務が発生する」「債務が消滅すれば契約も消滅する。消滅時期は時効の遡及効により契約時にさかのぼって消滅する。」というわけです。
個別契約の場合はこのような問題は生じにくい
個別契約や証書貸付という融資ごとに契約書を作成する形態の契約の場合(分割払いのショッピングローン等)、「全額返済=契約終了」「時効で残高消滅=契約終了」なのでこのような問題はほとんど生じません。消滅時効の援用で貸倒や完了の登録をするのは、嫌がらせが目的です。
消滅時効を援用しても延滞が続く理由
このテーマの初めの方で消滅時効の援用通知を受けた業者がとる対応として最後にあげた「時効を認めても信用情報機関には延滞を記録し続ける」について触れておきます。
業者がとる対応としてはこれが最も強烈です。
私自身はこのようなことをする業者を実際に見たわけではありませんが、債務整理をしている弁護士の方によればたまにいるそうなのです。
「消滅時効を援用したら借金は返さなくていいんじゃないの!?」と驚かれる方もいらっしゃるでしょうが、返す義務はありませんが返すことはできます。
消滅時効を援用しても、債務は債務として依然として存在しています。単に法的な手続きで請求が出来なくなったというだけに過ぎません。債務者(契約者)が自発的に支払ってくれれば、業者側は時効で消滅してしまったはずの債権(貸した金)の返済を受けることが出来ます。
このような性質の債務のことを「自然債務」といいます。時効の援用を受けて貸倒登録をする業者には「自然債務を貸倒処理した」という主張をしてる者もいるそうです。
延滞を記録し続ける業者側の言い分としては、この「自然債務があるから延滞には変わりがない」というわけです。
法律論として通りそうな気もしますが、法的手段で回収することが出来ない以上、信用情報の運用としてこれはさすがにどうかと思います。
業者側が修正に応じないときは信用情報機関に異議申し立ては可能か
異議申し立て自体は可能です。異議申し立てを行うと信用情報機関は業者側に調査依頼という形で業者側に異議の内容が正しいかどうかを調査するように求めます。
信用情報機関はあくまでも業者側からあげられた情報を登録しているにすぎませんから直接的な情報報修正には応じてもらえません。
信用情報機関は情報を登録した業者側に調査を依頼するだけですので情報修正を希望する場合は業者側と交渉する、または信用情報機関から事実に基づいた情報に改めるよう要請を出してもらう必要があります。
確定判決や和解調書など公正が担保された証拠に基づく修正要求であれば信用情報機関も積極的に業者側に情報修正を働きかけてくれます。
援用通知の出し方次第で信用情報の登録内容がかわるのか
通知の内容次第で信用情報への反映内容がかわることがあります。
通知内容が単に「消滅時効だから債務はなくなったよ」というだけでは契約終了として情報を登録する業者は信販会社、消費者金融問わずあります。
そのような通知を受け取った管理部はきっとほくそえんでいます。「踏み倒しやがってこの野郎~」とつぶやきながら、カタカタと完了や貸倒で契約終了の処理をして最後にせめてもの嫌がらせを行います(笑)。
そのため流れ作業で援用通知を出すだけの弁護士や司法書士に当たると信用回復に時間がかかる結果となることもあり得ます。
質の悪い弁護士や司法書士の中には「支払わなくてよくなったんだからそれでいいじゃないか」と言う職業意識に欠けた者も少なからず存在しています。そういう連中は、援用通知を内容証明で送付する際、字数が増えると郵便局に支払う料金も高くなるので原価があがるのが嫌なだけです。消滅時効の援用を通知してもらう時は信用情報の対応も忘れずにしてもらうようにした方が後々のためです。
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